「じゃあ、また帰りな」


そう言って、頭を撫でてくれる藤原先輩と反対方向に歩いて教室に向かう。



百合さん、今日も来るのかな…


今日こそ、駅前のケーキ屋さんに行きたい。

って、本当は百合さんに藤原先輩との時間を奪われたくないのが本音。


はぁ

さっきからため息しか出ないや…


とぼとぼと歩いていると、後ろから声をかけられ振り返る。





「…優馬先輩」


「久しぶり、奈緒ちゃん」



そう言って笑う優馬先輩の笑顔はやっぱり優しくて、泣きそうになる。


移動教室なのか、ぞろぞろとクラスの人達が後ろを通り過ぎて行く。



「泣きそうじゃん。どしたの?」


首を横に振る私に、眉を下げて笑みを浮かべる優馬先輩は、私に近付いて頭を撫でてくれる。



「春人が原因?」

「いや、藤原先輩じゃなくて…」


藤原先輩じゃないと聞いて、首を傾げた優馬先輩は私が続きを話すのを待っている。


「…百合さん」


百合さんと聞いてピクッと動く眉毛を私は見逃さなかった。


優馬先輩なら、何か知ってるのかもしれない。


「何か知ってるんですか?」

「んー、まぁね」


そう言って困ったように私を見る優馬先輩は、私に話してくれた。