「藍ちゃん!」


私のその声に振り返る藍ちゃんは、私を見て顔を歪ませた。


「…奈緒ちゃん」

「ごめんね、藍ちゃん。藍ちゃんの事無視して」

「ううん、いいの。こうやって話しかけてくれたから」


本当にごめんなさい!
と頭を下げて謝る私に、そんな!顔上げて!と手を握ってくれる。


「奈緒ちゃん、藍ね、春ちゃんに振られたよ」

「…うん、聞いたよ」


その答えに一瞬驚いた表情を見せたけど、すぐに笑顔になった。


「奈緒ちゃん、春ちゃんと上手くいったんだね!」



ギュッと握ってくれるその手は、小さくて白くかった。


ありがとう藍ちゃん。

心の中で呟いて、笑ってみせる。



「奈緒ちゃんになら、春ちゃんを任せられる」

「…藍ちゃん」



藍ちゃんの言葉が嬉しくて、藍ちゃんに抱きつく。


ありがとう!ありがとう!そう言って、笑い合う。



「藍ね、春ちゃんに、奈緒ちゃんの事好き?って聞いたんだぁ、そしたら、好きだよってとびっきりの笑顔で言うの。…勝ち目ないなって思っちゃったよ」


そう言って藍ちゃんは、どこか寂しそうに笑った。


「そうだったんだ…」



私、それを勘違いして…

とんだ大馬鹿野郎だ…



「でも、上手くいってよかったぁ!優馬と付き合ったって聞いてびっくりしちゃったよ!」


「うん、ごめんね」

「ううん、いいの!私、応援してるから!」



そう言って自分の席に戻った藍ちゃんは、別の子に話しかけられて教室を出ていった。