「えっ、ちょっと!ダメです!」


藤原先輩の体を離した私を見て、え?と呟く。


「藤原先輩には、藍ちゃんがいます」

「は?なんで藍が出てくんだよ」


「なんでって、藍ちゃんに告白されてOKしたんですよね?」



だってあの時確かに、好きだよって言ってたし!

私の間違いなんかじゃない、確かにそう言ってた。



「確かに告白はされたけど、OKはしてねーよ」



そう言って私を見つめる瞳。

「え、だって、好きだよって、言ってたし…」

「奈緒お前…また盗み聞きしてたのか…?」

「へっ?!ち、違います!ドアを開けたらたまたま聞こえて」


「とにかく、俺は藍とは付き合ってねーよ。たぶん、その好きだよってのは、お前の事」


そう言って、照れたように口元を隠す藤原先輩は、私を真っ直ぐに見つめて、こう言った。



「俺も好きだよ、奈緒」



えっ、えっ、えっ、こんなの台本にないんですけど!
振られるつもりで来たんですけど!


好きだよなんて、まって、心の準備が…!!



そんな私にはお構い無しに、抱きしめてくれる。


心拍数の上がりようは変わらないけど、気分は落ち着く。