どれぐらいの時間が経ったかは分からない。
でも、とにかく走って追いかける。
藤原先輩、今度こそ、聞いてほしい。
手遅れでもいい。私の気持ちを伝えたい。
がむしゃらに走って、ようやく見つけた後姿。
「ふっ、ふじわらっ、せんぱいっ!」
私の声にビクッと肩を上げた藤原先輩が、ゆっくりと振り向く。
「…奈緒?」
愛しい人が待っている。
私を真っ直ぐ見つめて、待ってくれてる。
ようやく藤原先輩の元にたどり着いたわたしは、息を整える。
「はぁっ、はぁ、ふじっ、ふじわらっせん」
「いや、落ち着いて、まず落ち着いて」
「はぁっ、はいっ、ありがとう、ございっます」
お言葉に甘えて十分に息を整えた私は、藤原先輩を真っ直ぐに見つめる。
ぐんっと心拍数が上がるのが分かる。
言うんだ。好きだって言って、砕けよう!
「そんなに走って、どうした?」
そう言って笑う藤原先輩は、全然変わらなくて。
やっぱり好きだと実感させられる。
「てか、優馬は?いいのか?」
「…だっていい」
「え?」
「優馬先輩は、今どうだっていいんです!!」
「え…奈緒?」
私の迫力に、一歩後ずさる藤原先輩。
「…好き」
「…はっ?」
「好きです、藤原先輩」
ボロボロと溢れ出す涙。
やっと言えた。好きって言えた…
ヘナヘナと崩れ落ち、地面に尻もちをつく私と、目を見開いて私を見る藤原先輩と、そんな私達を照らす夕日。