ダメだ。
優馬先輩を利用するなんて、絶対にしちゃダメだ。
「あのっ、優馬先輩!私やっぱり」
「奈緒ちゃん、どこ行こうか?」
私の言葉を遮って、歩き出す優馬先輩の背中は大きくて、悲しみを帯びていた。
「…優馬先輩…」
「…ごめん。今のはわざと」
そう言って、私に歩み寄る優馬先輩は、悲しい表情をしていて、心臓に太くて大きな針が刺さったかのように痛む。
こんな顔をさせてるのは、私のせい。
「ごめんなさい。私のせいで、」
「謝らないでよ」
「でもっ」
「俺が望んだんだ。利用されてもいいって」
そう言って悲しそうに笑う先輩は、辛そうで見てられなかった。
「私、優馬先輩にそんな顔させて、最低ですっ!…優馬先輩には、笑っててほしい。…大切な、友達だから」
「…友達か」
そして、何かが吹っ切れたように真顔になると、眉を下げて笑う。
「俺じゃダメみたいだね…好きな子にそんな顔させるなんて…ごめんね」
ふるふると、顔を振って否定する。
「優馬先輩は、悪くないです」
「行きなよ、春人んとこ」
フッと笑う優馬先輩は、私の背中を押してくれた。
「頑張れ!」
ありがとう、優馬先輩。
私、頑張るから!
心の中で呟いて、頭を深く下げる。