* * *
そして放課後
「行ってらっしゃーい」
そう言って、手を振る真奈に手を振り返して、待ち合わせ場所の校門まで歩く。
あ、いた。
遠くからでも目立つ優馬先輩を見つけて、ピンっと背筋を伸ばす。
笑わなきゃ。
頬を叩いて一足先に校門で待ってる優馬先輩の元へ駆け寄った。
「あの、お待たせしました」
「あ、良かった〜来ないかと思ったよ〜」
私を見つけて、優馬先輩は安心したように笑った。
「そんなっ、約束しましたし来ますよ」
そう言って、笑ってみせると、眉を下げて私をを見る。
「奈緒ちゃん、無理してない?気が向かないなら大丈夫だよ、家まで送ろうか?」
「えっ、いや、そんな!大丈夫で」
鼻を通る、私の大好きな甘い香水の香り。
思わず匂いのする方を振り向く。
「…藤原先輩」
私のその声で、優馬先輩も振り向く。
「…春人」
悲しげな表情で、私を見つめる藤原先輩。
どうして、そんな目で私を見るの?
「お前ら、付き合ったんだって?…おめでとう」
「…おう、ありがとな」
そう言って、優馬先輩は私の肩を抱いた。
「今からデート?…楽しんでな」
違う。私が好きなのは…
藤原先輩、あなたなんだよ?
心の声が届くはずもなく、藤原先輩はわたしの横を通り過ぎる。
意気地無しだ。
もう気持ちは変わらないって分かってるのに、優馬先輩を利用しようとしてる自分がいる。