「ごめん、今のは卑怯だった」



そう言って、私の頭を撫でてくれる大きな手。



「どうして、ここが?」

「さっき、翔太に会ったんだ」


翔太先輩。
そう言えば、無視して行っちゃったな…
後で謝らなきゃ。



「そしたら、奈緒ちゃんが走って春人の所に行った。春人、藍に呼び出されて、たぶん今告白されてると思う。っていうから…思わず走って奈緒ちゃんの事探し回ってたんだ」



そう言って、照れたようにはにかむ優馬先輩は、どこか切なそうで。


「そしたらやっぱり屋上にいた」


そして、また私を抱きしめる体は少し震えていた。


「奈緒ちゃんの気持ちは分かってる。でも、俺は奈緒ちゃんが好きだから」


俺の側にいてほしい。


そう言って、更に強く抱きしめてくれる。


側にいてほしい。
藤原先輩に言われたかった言葉。


緩くなった涙腺が、容赦なく肌を濡らす。



「…ご、ごめんなさ」

「いい。今は、言わなくていい。返事は分かってるから。…利用してくれていいから、俺と、付き合ってほしい。絶対に!絶対に、幸せにしてみせる、好きになってもらえるように、頑張るから…」



何も言えなかった。

断る事も出来ずに、ただ抱きしめられていた。