藤原先輩と初めて出会った時から月日は経って、6月。
蒸し暑さのせいで、額に汗が滲む。
藤原先輩!
心でそう叫びながら、無我夢中で藤原先輩を探す。
「奈緒ちゃん!」
名前を呼ばれて振り返ると、翔太先輩が私に手を振っていた。
「しょ、翔太先輩!藤原先輩どこにいるか知りませんか?!」
「え、春人?確か、春人なら保健室に行くって」
「ありがとうございます!」
「えっ?!ちょ、奈緒ちゃん?!」
後ろで声が聞こえるけど、そんなの今はどうでもいい。
後悔する前に、藤原先輩に気持ちを伝えたい。
階段を駆け下りて、保健室に向かって走る。
だんだん近付く、保健室と書かれたプレート。
「はぁっ、はぁ、ちょ、ちょっと飛ばし過ぎたっ」
保健室のドアの前で、息を整える。
大丈夫。言える。私なら言える。
心でおまじないを唱えるように繰り返して、ドアに手をかける。