ハッと我に返った私は、慌てて返答するけど…
「ぬっ、ぬす、盗み聞きなんか、し、してません!」
噛み噛みで超絶恥ずかしい。
「…ふーん、ま、いいけど」
そう言って、立ち上がった彼は、甘い香りを残してこの場を去って行った。
「な、なに、今の…」
ドキドキと高鳴っていた心臓をなだめるように、胸に手を当てて、深呼吸する。
いやいや、シンプルに怖かったよ。
え、てか、何で盗み聞きしてるのバレたの?!
「…こわ」
その言葉と同時に、授業の終わりを知らせるチャイムが学校中に鳴り響く。
一限目、サボっちゃったじゃん…
ゆっくりと腰を上げ、さっきの出来事を頭の中でリピートしながら、教室に向かった。