「あの、藤原先輩は、好きな人いますか?」



俺の背中に向かって投げかけられた質問。

お前だよ、なんて言えるはずなくて…




「…いるよ、好きなやつ」

「そ、うなんですね」




「…あのっ」


沈黙を破る塚田奈緒は、真っ直ぐに俺を見ていた。


「ん?」

「藤原先輩の好きな人って」




「あの、卒アルの女の人ですか?」


「……は?」


は?卒アルの女?って、もしかして…




「違う。アイツは、ただの元カノ」


そう聞いて、首を傾げる塚田奈緒。

まさかまだ未練があるとでも思ってんのか?




「知りたい」

「え?」

「…藤原先輩の事、もっと知りたいです」



知りたい。

面と向かってそんな事言われたのは初めてで、すごく嬉しかった。


俺の事を知ってほしい。

でも、知っても塚田奈緒に得なんてない。



「知っても、別にお前に得なんてねーよ」




「得とか損とか、そんなんじゃないんです。藤原先輩がどんな人なのか知りたい。ただそれだけなんですっ」



シーンと静まる保健室。


こいつなら、話してもいいかなって、そう思った。
カッコ悪いけど、こいつなら、そんな俺でも受け止めてくれる。

そう思うと、口が動いていた。