「ふ、藤原先輩って」



沈黙を破った塚田奈緒は、俯いたまま続ける。




「す、すす」

「すす?」

「す、すきな、」

「すきな?」

「好きな食べ物ってなんですか?!」



好きな食べ物?それ今聞く?

ほんとこいつは、期待を裏切らない。



「…ん〜、ハンバーグ」



そう言って笑いかけると、嬉しそうに塚田奈緒も笑う。



好きなやつとか、いんのかな。

好きと気付いた後に浮かぶ疑問。

本人に聞く以外方法はなくて、意を決して質問する。



「お前さ、好きな奴とかいんの?」


俺の質問に少し間を空けて、「いますよ」と答えた塚田奈緒の横顔はすごく綺麗で。



ほんとに好きなんだな。

それと同時に、報われないと分かってしまったこの気持ち。


「…そっか」

そう言って、誤魔化すように背を向けて伸びをする。


叶わない。

そう思うと、胸が苦しくて、顔が歪む。