「…あのっ」
「ん?」
「藤原先輩の好きな人って」
「……」
私の言葉を、首をかしげて待つ藤原先輩。
「あの、卒アルの女の人ですか?」
「……は?」
え?!違った?!
違ったならとんだ勘違い野郎だよ!
「違う。アイツは、ただの元カノ」
ただの、元カノ。
じゃあなんで、あんなに悲しそうな顔して写真を眺めてたの?
聞きたい。
どんな過去があったのか、知りたい。
「知りたい」
「え?」
「…藤原先輩の事、もっと知りたいです」
言ってしまった。
知りたいなんて、藤原先輩にとったら迷惑なのに。
「知っても、別にお前に得なんてねーよ」
損得じゃない。
ただ、藤原先輩が好きだから、知りたい。
何色が好きで、どんな曲を聞いて、どんな恋愛してきて、どんな事が悲しくて、どんな事が嬉しかったのか。
藤原先輩の全部を知りたい。
「得とか損とか、そんなんじゃないんです。藤原先輩がどんな人なのか知りたい。ただそれだけなんですっ」
シーンと静まる保健室。
立ち尽くす私と藤原先輩。
ドキドキと、藤原先輩にまで聞こえてしまいそうなぐらい、大きく高鳴る胸。