「言っとくけど、彼氏じゃないからね!!」
「えぇ〜、そうなの?なら、好きな人?」
「うん、まぁ」
「やだぁ、奈緒ちゃんったら、そう言うのは早く言ってよね!」
若い。ノリが若すぎる。
「どんな人なのか、後で聞かせてね!」
そう言って、るんるんとスキップしてキッチンに戻るお母さん。
ほんと、若い。
ニヤつく顔を叩いて、階段を登りながら真奈に電話をかけた。
「もしもし、奈緒?」
「うん。真奈、さっきはごめんね」
「ううん、謝るのは私の方。言い過ぎたよね、ごめん」
そう言って笑い合う。
真奈が親友でほんとによかった。
ダメな時は叱ってくれて、嬉しい時は一緒に喜んでくれる。
「あのね、真奈。私、自分の気持ちにもう嘘つかない」
「うん、それがいいよ」
「私、藤原先輩が好き」
好き。
その言葉を発するだけで、胸が高鳴る。
「頑張りなよ、奈緒。敵は強いよ」
…そうだ。藍ちゃん。
私には、すごい身近にライバルがいたんだ。
でも、頑張るって決めたから。
絶対に諦めない。
「うん、頑張る。ありがとう真奈」
「いえいえ。じゃあ私、今から翔太先輩とデートだから♡」
デート?!展開が早い。
さすが真奈。やり手だ。
「分かった!真奈も頑張ってね!」
そう言って電話を切った私は、制服のポケットからメモを取り出す。
藤原先輩の電話番号。
ニヤニヤする顔を叩いて、表情を戻す。
一応、登録だけしておこう!
ササッと登録を済まして、スマホをギュッと握りしめたまま、眠りについた。