* * *
「はぁ…はぁ…やばいっ…つ、つかれたっ」
バスに乗り、学校から1番近いバス停で降りたあと、ダッシュで学校に向かったせいか、もんのすごく体が強ばっている。
あ、そういえば朝から携帯確認してなかったな…
乱れる呼吸を整えて、下駄箱に向かいながら、ブレザーからスマホを取り出して画面をタップする。
「…ゲッ」
着信履歴を確認すると、親友の早川真奈から何件も着信が入っていた。
いや〜、こりゃ絶対に怒られるわ…
ハァ、とため息をついた時、どこからか声が聞こえて、足を止め、息を潜めて耳を済ます。
「どうして?…私のどこがダメなの?」
泣くのを堪えているのか、震える女の子の声。
「全部」
ハァ、とため息をついて気怠そうに答える、男の子の声。
下駄箱付近から聞こえる会話を、下駄箱の壁に隠れて盗み聞きする私。
きっとこれは"告白現場"。
でも、これじゃ上履きに着替えられないじゃん…
真っ赤な顔して怒る担任の山ちゃんの顔を思い浮かべ、どのタイミングで下駄箱に行こうか見計らうけど、なかなかタイミングが見つからない。
そうこうしているうちに、話はどんどん進み、さらには女の子が耐えきれなくなったのか泣き出した。
「…チッ」
泣かれるのが面倒なのか、舌打ちする男の人。
オイオイ、いくらなんでも可哀想でしょーよ…
さっきから女の子の質問にたいして、面倒やらウザいやら興味無いやら、容赦なく心無い返答をする男の人。
なんかこう、もっとさ、優しく断る事出来ないの?
適当な返答に、イライラする心を落ち着かせ、終わるのをひたすら待つ事にした。