「奈緒は、藤原先輩の事が好き?」
「…分からない」
藤原先輩の事が好き好きかどうかなんて、分からない。
確かにカッコいいし、いい人だし、一緒に居て落ち着くし、藤原先輩の笑顔は好き。
そもそも、好きの境界線が分からない。
好きだったとしても、付き合えない。
重荷になりたくない。
きっと、藤原先輩も重荷になるような女は願い下げだと思う。
「…奈緒、怒るよ」
「…へ?」
「へ?じゃない!…奈緒はいつもそう。自分に自信がなくて、自分より他人優先で。優しい所はいいとこだと思うよ?でも、幸せになりなさい。幸せになる努力をして欲しい。自分の気持ちに正直になってほしい」
「いつまで自分の気持ちに嘘つくの?藍に藤原先輩の事が好きって言われてどう思ったの?嫌だった?嬉しかった?心から応援できる?…藤原先輩が、他の誰かに取られてもいいの?…藍と藤原先輩が付き合ったら、おめでとうって心から祝福できる?」
真奈は、よく考えて、とそう言って先に帰ってしまった。
「……」
一人、門の前で立ち尽くして、ボーッとただ地面を見つめていた。