「まぁ、盗み聞きは引いたけど」
掴んだままの手を離して、ドリンクを適当に入れる。
「す、すみません、そんなつもりじゃなくて」
「知ってるよ」
「え?!知ってるの?!」
知ってる。
遅刻してきて、上履きに履き変えようとしたら俺が告白されてて、終わるのを待ってた。
あの後、教室に戻ったあと、ふと何であんな所に座ってたのか考えた。
きっと、そうだと思ってた。
凄い顔してびっくりする塚田奈緒の顔を見ると、なんだか笑えてきて。
久々に笑った気がする。
「…藤原先輩って笑ったりするんですね」
「おい、どういう意味だよ」
「気にしないで下さい」
そう言って、柔らかく笑う塚田奈緒は可愛くて、気分が落ち着く。
正直、もう少し見ていたいと思った。
見つめていると、塚田奈緒と目が合う。
が、すぐに逸らされた。
なんでこいつはすぐに目を逸らすんだろうか。
俺のこと、嫌ってんのか?それとも怖いとか?
「こわい?」
気付いたらそう聞いていた。
嫌な所があるなら直そうと思った。
嫌われてるなら理由が知りたいと思った。
俺、変だな。
いつもは干渉したりしないのに。
「怖くないですよ」
怖くない?なら何で?
「…じゃあなんで、目逸らすんだよ」
他人なんか興味無いのに、気になる。
「……れいだから」
「…え?」
「綺麗だから、藤原先輩の目。…私の黒い部分とか、何もかも見透かされてるようで、引け目を感じるというか…」
「……」
なんだコイツ。わざとか?
てか、黒い部分ってなんだよ。
でもきっと、これ以上は聞かない方がいい。
塚田奈緒は分かりやすいぐらいに肩を落としていたから。
話を変えるように、戻るぞ、と声をかけて、部屋に戻ることにした。