「おっ!じゃあ春人も行ってこいよ!」
「は?なんで俺?」
「お前のせいで遅刻したんだからなー。それに、奈緒ちゃんとも知り合いみたいだし?」
ニヤニヤする優馬を睨んで、部屋を出た。
その後を追いかけるように着いてくる塚田奈緒。
コツコツ、とパンプスの音が聞こえる。
何か、喋った方がいいよな。
でも何喋ったらいいのか分かんねーし…
頭の中で考えていると、「…あの」と先に喋った塚田奈緒。
「…なに?」
何を言われるかのと、嫌に胸が高鳴る。
「えっ、と、あの時は、すみませんでした」
「…は?」
すみませんと聞いて、思わず立ち止まって振り返ると、塚田奈緒と目が合う。
すると、それを避けるように逸らす目。
…嫌われてる。
塚田奈緒の行動で、素直にそう思った。
帰りますね!と横を通り過ぎる塚田奈緒を、特に何も話すことも無いのに、気付けば引き止めていて。
「…え?」
「…あのさ、別に怒ってねーよ」
「えっ?…そうなんですか?」
「俺が機嫌悪いのは、あいつらせい」
きっとこいつは、俺が怒ってると思ってる。
別にそこまで機嫌が悪い訳じゃない。
でも、なんとなく、翔太と優馬のせいにした。