【 春人 side 】



ーーー〜♪♪〜♪♪〜♪♪



土曜日の午後15時。

着信を知らせる軽快なメロディーで昼寝から目を覚ました俺は、スマホを手探りで掴み、電話に出た。



「…はい」

「あっ、出た出た!おはよー!」

「おはよ。なんか用?」



起こされてイライラする気持ちを抑えて、電話の相手、優馬の返事を待つ。



「春ちゃん、今日暇?」

「まぁ、暇だけど」

「よぉーし!18時に駅前のカラオケ集合な!」



"翔太と優馬と遊ぶ"

そう聞いてたのに…騙された。




* * *



「あ、藍ちゃんから返事きた!もう部屋に入ってるって!」



藍ちゃん?部屋?もう入ってる?



…騙された。



「帰るわ」



そう言って帰ろうとする俺を引き止め、無理矢理連れてこられたカラオケ。


しかも、部屋にはこの前の下駄箱の子。


気まづすぎだろ。



空気を壊すわけにはいかないし、仕方なくその場にいる事にした俺は、なんとなく、その子の顔を眺める。





「奈緒!奈緒が行ってきてくれる?」



塚田奈緒。さっき自己紹介で聞いた名前。

塚田真奈は、少し戸惑った表情を見せたが、すぐに笑顔になって頷いた。