走った。
藤原先輩の後ろ姿は、もうすぐそこまで見えている。
言わなきゃ!今、言わなきゃ!
無我夢中で走って、藤原先輩の腕を掴む。
何事かと、後ろを振り返った藤原先輩は、驚いた表情をしたけど、すぐににっこりと笑った。
「奈緒、久しぶり」
ねぇ、藤原先輩に名前を呼ばれるだけで、こんなにも胸が苦しくなる。
「お久しぶり、です」
ねぇ、藤原先輩の顔を見るだけで、好きが溢れる。
「そんなに走って、どうした?」
伝えたい事があるから。
伝えなきゃ絶対に後悔するから。
「…言いたいことが、言わなきゃいけないことが、あるんです」
首を傾げる藤原先輩を真っ直ぐ見つめて、カーディガンの裾をギュッと握る。
「…私、藤原先輩の事がす…」
「ちょっと待って!」
「…え?」
片手で口元を隠す藤原先輩は、ちょっと待って、と呟いた。