「何があったか詳しく知らねーけど、奈緒を守れるのはお前だけじゃねーのかよ。泣かせてどうすんだよ」



「奈緒、泣いてたのか?」


そう言って、奈緒を見つめるけど、奈緒は俯いてこっちを見ようとしない。



「…奈緒、話してくれないと分かんねーよ」


「……いるじゃん」

「…え?」

「ふ、藤原先輩だって、百合さんと一緒にいるじゃん!私、そんな事何も聞いてない!」

「…っ、」

「腕組まれてるのに拒否しないし、そのくせに私が涼太くんと居たら怒るし、分かんない!藤原先輩が分かんない!」



溢れる涙をカーディガンで拭った奈緒は、その男を引っ張って行ってしまう。



「っ、おい!奈緒!」



追いかけようとしたけど、百合はそれを阻止する。



「…離せよ」


「やだよ。離さない。デートが終わるまでは、離さないっ」



そう言い張る百合の手を無理矢理離せば良かったのに、俺はそれが出来なかった。