【 春人 side 】




──♪〜♪♪〜♪〜♪♪〜



放課後、奈緒の所に行こうとした俺に一本の着信が入った。



「はい」

「…もしもし?春?」



百合だ。

何で番号知ってるんだろうかと思ったけど、きっと翔太か優馬だろうと勝手に解決して、話を聞く。



「春、私、春の事諦める。諦めるから、最後にもう一度だけ、デートしてほしい」

「…本当にそれで、諦めてくれるのか?」

「うん、本当だよ」



デートして諦めてくれるなら、と了承した。


了承したのが間違いだった。


俺は、百合に優しすぎた。

奈緒を傷付けている事に目を背けていた。


* * *


校門で待っていると、案外早く到着した百合は、俺に駆け寄って腕を組む。


「…やめろよ」


そう言って振り払ったけど、キツく組まれて離れない。


「デートなんだから、これもセットだよ!」


そう言って笑う百合に、苦笑いで返す。



「じゃあ、いこっか」


と、百合の声のすぐ後に、俺の前に立つ奈緒と男。



…誰?

自分の事は棚に上げて、奈緒を責める。



自分はこうして百合とデートしようとしているのに、奈緒が男といる事に対して不機嫌になる。


矛盾している。

分かっていても、止められない。



「…何してんの?」


俺の問いかけに酷く反応したその男は、奈緒の腕を掴んだまま、俺を責めた。