泣いてる私を見て、走って私の元に来た涼太くんは、私を抱きしめてくれる。




「…奈緒っ」

「…涼太くん、うっ、わたし、わたしっ」

「喋らなくていいから、泣きたいだけ泣けよ」



ぶっきらぼうだけど、優しい声でそう言ってくれる涼太くんの胸を借りて、涙が出る枯れるまで泣いた。



どうして涼太くんは、私の元に来てくれたの?

どうしていつも助けてくれるの?

どうして、私の側にいてくれるの?



どのぐらい時間が経っただろうか。

とりあえずチャイムが2回ぐらい鳴った気がする。



それでもずっと抱きしめてくれていた涼太くんは、ずっと背中をさすってくれていた。



「…りょっ、涼太、くんっ、どうして、ここに」


「…奈緒が藤原先輩の所に行ってから、また休み時間に教室に来たんだ。でもまだ帰ってきてないって聞いて、もしかしたらって、そしたらやっぱり泣いてるお前が居た」



「ありがとう、」


「…奈緒、今言うのは卑怯だけど、聞いてほしい」

「う、んっ」



「好きだ。俺と付き合ってほしい」



真っ直ぐ私を見つめて、私の手をギュッと握る涼太くんの手はやっぱり冷たくて。



涼太くんなら幸せにしてくれると、そう思った。

藤原先輩の事が好き。
でも、涼太くんの気持ちに応えたいと思った。


涼太くんを好きになりたいと思った。



「…はい」


そう言うと、マジ?と目を見開く涼太くんを見て、思わず笑ってしまう。



「…まじ」

「っ、奈緒、俺絶対に後悔させないから!」



そう言って笑う涼太くんにつられて笑う私。

9月の終わりの冷たい風が、素肌に触れる。



「寒いね」


そう言って手を握り合って、屋上を後にした。