「久しぶり、奈緒」
「お久しぶりです」
そう言って笑ってみせると、藤原先輩も笑ってくれた。
あぁ、やっぱり好き。大好き。
私はずっと、この笑顔が見たかった。
「あの、藤原先輩…ごめんなさい」
「…いや、奈緒は悪くない。俺が悪かった」
「何も聞いてないなんて、聞けば良かったのに、あんなのただの八つ当たりでした」
「いや、おれが最初から伝えていれば良かったから。奈緒は悪くない」
じゃあ、お互い様ですね、と言って笑い合う。
幸せ。
また藤原先輩の笑顔を見れた。それだけで幸せ。
「…奈緒」
静かな声に、暗い表情の藤原先輩を見て、ドクンと大きく脈を打つ。
「…別れよう」
…え?
ドンキで殴られたような衝撃が走った。
「…先輩?仲直りしたてでその冗談はキツいですよ〜」
「…冗談じゃない。本気だから」
ぽたぽたととめどなく溢れ出す涙が地面を濡らす。
そんな、別れようなんて、どうして?
藤原先輩の別れようのセリフがリピートされる。
「…え、どうして」
「…ごめんな。もう、お前の事は好きじゃない」
そう言って、私の返事も聞かずに立ち去った藤原先輩。
すれ違う時にフワッと香る、私の大好きな甘い香り。
私はただ、立ち尽くす事しか出来なかった。