あっという間に藤原先輩の元についた私達は、藤原先輩の前に立つ。



「…奈緒」

「っ、」


私と涼太くんを見て、眉を寄せる藤原先輩。



藤原先輩は、涼太くんを睨みつけるように見ると、私に問いかける。



「…何してんの?」


藤原先輩の声を聞いて一気に上がる心拍数。

何が起こるのかと、冷や汗が止まらない。



「何してんのじゃねーよ。お前こそ何してんだよ」

「…は?」


睨み合うふたりをただ唖然として見つめる私と百合さん。



「お前奈緒の彼氏だろ?…その女と何してんだよ」

「っ、」

「何があったか詳しく知らねーけど、奈緒を守れるのはお前だけじゃねーのかよ。泣かせてどうすんだよ」



喧嘩腰な涼太くんを止めようと、声をかけるけど無視。



「泣いてた?」


そう言って、私を見つめる藤原先輩は、悲しそうな顔をした。



「奈緒、泣いてたのか?」


俯いて何も喋らない私を見て、ため息をつく藤原先輩。

きっと、怒ってる。
私が何も言わないから怒ってる。呆れてる。



震える足を見つめながら、ただ時間が過ぎていく。



「…奈緒、話してくれないと分かんねーよ」


「……いるじゃん」

「…え?」

「ふ、藤原先輩だって、百合さんと一緒にいるじゃん!私、そんな事何も聞いてない!」

「…っ、」

「腕組まれてるのに拒否しないし、そのくせに私が涼太くんと居たら怒るし、分かんない!藤原先輩が分かんない!」



どっと溢れる涙をカーディガンで拭って、涼太くんの腕を引っ張って歩く。



「っ、おい!奈緒!」


藤原先輩が私の名前を呼んでる。

それでも私は、振り返る事なく涼太くんと歩いた。