「…もう、おせーよ」

「うんっ、ごめんね。傷付けて、ごめん」



* * *



そこからお互い喋る事なく、百合が紅茶を飲み干すのを見届けて、カフェを出た。



「春、これで最後だから言わせて?」

「なに?」

「本当にごめんなさいっ」



深々と頭を下げて謝る百合は、小刻みに震えていた。



「…いいよ、もう。3年前の事だし」

「…でもっ、私は!春を思い出になんて出来ないよ…」




大好きだった百合。

俺の事をなんでも分かってくれていた。

でも俺は、百合の嘘も、別れる時のあの辛くて悲しそうな顔も、どれも見抜けなかった。


百合自身ではなく、言葉を信じた。


謝るのは、俺の方だ。