「梨々香の気持ちを考えたことがありますか?

あの子が最近ずっと元気がなくて落ち込んでいたのは、あなただって知ってるでしょう」



「…っ。いや、しかしだな…」



「あなたはいつも、自分の意見ばかり押し付けて、自分が安心したいがために梨々香を縛っていたのに気が付かなかったの?」



そう言われた瞬間、言葉に詰まる兼仁おじさん。



「梨々香はもう子供じゃないんです。

ちゃんと意志を持った一人の人間です。

親の言いなりになるような年頃じゃない。

梨々香にとって本当は何が幸せなのか、あの子の立場になって考えてあげるべきよ」



そう言い切った奥様の目からは、一筋の涙がこぼれ落ちた。



それを見て俺も、何とも言えない気持ちになる。



「…っ、ワシの、せいだというのか…」