『…ほんとに地元の中学行かねぇのかよ』

『うん。もう合格通知ももらったし、入学手続きも終わっちゃったよ。
…もしかして、寂しいとか?』

私が笑いながらそう言ってみると、君は顔をそらして、絞りだすような声で、叫んだ。

『んなわけねえだろ!…お前がいなくて、なんも変わんねぇよ』

『うん、知ってる。じゃあね、元気でね』

君が私を引き止めた気がするけど、構わず歩き出した。
ケータイを取り出して、アドレス帳から君の名前を探す。

少しためらいながら、削除キーに指を置く。

これで、諦めよう。小学生の恋なんて、いつか消える。少しの思い出として、消える。
君も少しずつ私を忘れて、夢に向かって進んでいくんだろう。それでいい、それでいい。

けれど、それでも、と思うんだ。

『消えてくれたらいいんだけどなぁ』

そんなわけないと。

私の中で、そんなに軽い恋ではなかったということ。それを私はこれから、嫌というほど思い知ることになるんだ。

だからせめて。君の中の私だけでも。

『消えてほしいなぁ』

二度と見ることのない君の笑顔が少しずつ霞む。
そのまま、目を閉じて、ボタンを押した。



『ばいばい』