学校に忘れ物をして帰るなんていつぐらいぶりだろうか、沈みかけの太陽を背に、腹巻ゆずは自分の通っている中学校へと向かった

「あったあった」
そう言って目当てのノートをおもむろにカバンの中にしまう。今日の授業の内容を復習するつもりだったのだが、帰ってからカバンの中を見るといくら探してもノートが見当たらなかったのだ
「別に明日でも良かったんだけどね…」
今日習った内容はすぐに復習、そうでもしなければ学年トップの座を守り通すことはできない、昔から天才だと言われてきたゆずはまわりからの期待が大きく、その日の復習はもちろん、一日七時間の勉強が当たり前となっていた。

窓の外を見るとさっきまで美しいオレンジの光を放っていた太陽の姿は無く、時計がもうすぐ7時をさそうとしていた。5月になって日が長くなってきたが、7時前となるとあたりは真っ暗になってしまう。



カッカッ!!

「!?」
今ここの教室には自分以外誰もいないはずなのに…………ゆずの思考が一時停止する
「そんなに怖がらないで」
どこからか声が聞こえ、固まっていたゆずは我に返った
「誰!?」
後ろを振り返り少し荒らげた声で聞いてみたがそこには誰もいなかった。
「!!」
黒板に何か書いてある……さっきまで何も書いてなかったのに
〘あなたの願いをお一つだけ叶えて差し上げましょう〙
「何…これ…」
「腹巻ゆずさん」
「え!?」
「こんにちは、いやこんばんはかな?」
「あの…誰…?」
「あはっ、そんな怯えた顔しないで、僕の名前はレタス」
「レタス…?変な名前…」
「アッハハッ、そう?僕は気に入っているのだけど。」
「…………………それで何しにきたの?聞きたいことが山ほどあるんだけど」