高校3年生の夏、社会見学へ。
有名な場所。
親友と一緒に歩く。
「暑い~。」
ダラダラ歩く。
行き帰りのバスは隣同士。
私が窓際、親友は通路側。
他愛もない話をしたり、無言になったり、そういう時間が好き。
帰りのバスがなかなか出発しない。
誰かが先生に聞いた。
どうやら全員揃っていないらしい。
(私のクラスは全員揃っとるでしょ。)
きっと他のクラス。
人数が少ないから皆を見たら誰がいないか分かるけど、前の席に座ってるし振り替えるの嫌だし、どうでもいいからなにもしない。
バスの中がざわめきだす。
(なんだ、あの3人か)
窓際だからすぐに見えた。
バスの席は埋まってたから、補助席に3人は座っていった。
親友の隣に学年で一番背が高いキミが座った。
私は別に気にせず親友と話をした。
ヘアアレンジをしたり、先生に内緒であけてたピアスを消毒をしたりしていた。
『え、ピアスあけとん?』
キミは小さな声で話しかけてきた。
「うん、そうだよ。」
『へー、意外。』
だって、あけたかったんだもん。
『あ~俺眠くなってきたかも。でも狭いなぁ。』
キミはそう呟いた。
(まぁそりゃ、狭いでしょう)
なんせ一番背が高いんだから。
すると私の親友が、席変わるよって。
(まじか、隣に巨人がくる…)
学年で一番背が低い1番2番を争う私にとってキミは本当に巨人でしかなかった。
(あまり関わったことないなぁ)
そう思いながら窓の外を眺めていると
トントン
肩をたたかれた。
「ん?」
見ると、キミの手にはシャーペンと手帳。
そこには小さく絵が書いてあった。
「え?」
『しりとり。絵の。』
「あ~」
私たちの絵描きしりとりは始まった。
手帳1ページいっぱいに描いて遊んだ。
(あれ、意外と面白い)
話さないと分からないもんだなって。
『俺、あなたの名前漢字ても書けるよ。覚えとるけ。』
「じゃ、書いてみて。」
『え~っと…』
結果、書けてないというね。
おしかった。
「残念でした~。」
『んじゃ次、俺の名前書いて。』
「いいよ。」
私は書けた。
『すげ~。』
「まぁね。」
『ねぇ、下の名前で呼んでいい?』
「え?いいよ。」
『…。あ、やっぱ無理。恥ずかしい。』
可愛いところもあるじゃないか。
少しきゅんってしたよ。
そんなこんなで、私の社会見学は終わった。