"初恋は実らない"


自動車学校へ向かう途中、ふと思い出した。
隣には初恋の人。
中学校まで同じ学校だったけど、高校から別々。


(背高くなったなぁ…)

そんなことを思いながら車に揺られる。

学課を受ける時、知り合いがいないから自然と席が近くなる。
乗車待ち時間、待合室、知り合いがいないから自然と近くに座る。
キミとはたまにお話するだけ。


『よく一緒におるけど付き合ってんの?』

って自動車学校の先生に言われた。
お互い顔が赤くなった。

「そんなことないですよ~」

私は否定した。
あれ?キミは笑ってるだけ?




自動車学校で会う度に少しずつ話が増えていった。


(小学生の時は三回告白したんだっけ)


そう思いながら連絡もとりあった。


(小学6年の時に両想いになれたんだっけ)


思い出しながら自然と頬が緩むのが分かった。



ある日の冬の自動車学校の帰りのこと。
もう夜。
みんなを送っていく車の中。
最後に残るのは一番後ろの席に二人、私たちだけ。


(車の中は暖かいなぁ)


そう思いながら私はウトウトしていた。


(あ、寝てた)


道路の段差で車が揺れて、目が覚めた。
右側に温もりを感じた。
みると目の前にキミの肩。


ごめん


そう言おうとした。
でもできなかった。


私の右手にキミの左手が重なった。

声が出ない。

変わりにキミを見つめた。

キミは照れたように反対の手で口元を隠し、チラッと私を見て微笑んだ。



"初恋は実らない"


本当にそうだろうか。
少し期待してもいいのかな。


キミは私の存在を確かめるかのように、何度も少し強く握った。

(心地いい…)

凄く幸せな気持ち。
凄く安心する。

(また、キミに恋してもいいですか?)

そう思いながら車に揺られた。


「またね。」

そう言って私は車を降りる。
キミは少し寂しそうに、名残惜しそうに右手を握りしめながら

「じゃあね。」

って言う。


(好きになりそう…)

そう思いながらも自動車学校に通い続け、無事二人とも卒業もした。

でも段々連絡も途絶えていった。


免許とってからは、数回二人で遊びに出掛けた。

遊ぶときはお互い照れながら遊んだ。
とても楽しかった。

そしてキミは、

ふいに私に

キスをした。


照れて真っ赤になりながらお互い笑った。


でも想いを伝えることはなかった。

今もずっと。



私に彼氏ができた今、心の隅にキミがいる。
キミから連絡がきたとき、嬉しいと思っている私がいる。
キミが頭にちらつく。

キミはそのくらい大きな存在。

キミの中で私はどれくらいなのかな。
知りたい。
でも、怖くて、知りたくないの。

この想いはずっと届かないまま。
私の心の中にとめておくの。




ねぇ、やっぱり

"初恋は実らない"。