「辞めんのか」

「…そのうち」

「メンバーと寝たの?」

社員用のエレベーターの
ボタンを押して、
猿くんはさりげなく
とんでもない事を
聞いてきた。


「それはないけど」


「さすが。えらいぞ」



何が?

何がえらいんだよ。

バンド仲間に
手は出さないけど、
ぼくただの肉便器だよ。


「兄ちゃんはお前が心配で心配でしょうがないんだぞ」


「あっそう」


「あっそうってお前…」


エレベーターを降りて、
街に出る。

夜の街は誘惑が多い。

今日は猿くんが居るから
ナンパされる事はないけど
いつもだったら
誰かに引っかかる。

一夜の関係の人もいれば、
何回か遊ぶ人もいる。



その何回か遊ぶ人のことで
ぼくは今悩んでいた。




「何食いたい?由真」

「ラーメン」

「よっしゃ」


何回か遊ぶようになった、
そのAくんのことが、
ぼくは今
気になってしまっている。

3ヶ月前に初めて遊んで、
それから週1ペースで
遊んでいたんだけど。



最近連絡が
来なくなってしまった。