一応会話はしているけど、
ぼくはAくんのことが
ショックで上の空だった。


「ぼくだったらポチなんて平凡な名前で呼ばないよ」


それにお兄さんは
ニヤニヤしながら
興味深そうに首を傾げた。

お前だったら何て呼ぶ?
って。




「ラーク」




それはタバコの銘柄だ。



Aくんが吸っていたタバコ。





嫌でもAくんのことを
考えてしまう。

あと数秒後に
ぼくは泣いてしまう
気がした。

だからぼくは
お兄さんの横を通り過ぎた。



お腹が空いた。
何か食べよう。
7時まで仕事なんだから、
力を蓄えなくちゃ。




…後ろの方で、お兄さんが
「かっこいー」と呟くのが
聞こえた気がした。





◇◆◇◆◇◆




ぼんやりと
ハンバーガーを食べて
ジュースを飲んで
タバコに火をつけた。


淡々と時間は過ぎていって
休憩時間は半分を切った。


涙の膜で視界がぼやけた。


失恋っていうのかな、
こういうの。


いや、ちょっと違うかな。