その困った笑みが
全てを悟っている。


きみとぼくの関係は
もう終わっていたんだ。


心臓が痛い。


繋がっていたい糸は
簡単に切られてしまう。


ぼくはボーっとして
その場に立ちすくんでいた。


痛い。




もう手を繋いで歩いたり、
抱き合ったり出来ないんだ。


他の誰かで
この痛みを消す事は
出来るんだろうか。






「ワン!」






「………」





…犬に吠えられて我に返る。

尻尾を振って舌を出して、
ぼくを見上げてくる
子犬がそこにいた。


「おーナンパか?ポチ」


それを追ってきたお兄さんが
飼い主だろうか。


お兄さんは
整った顔をしていた。

日本人じゃないような
顔をしていた。


服装はTシャツにハーパンと
サンダルで、
オシャレとは
言えなかったけど。


「…ポチって、ありきたりな名前だね」


ぼくは思った事を
すぐ口に出してしまうので、
それを後悔する時もある。


「俺の犬じゃないよ。客の」


「じゃあポチってのは偽名?」



「そうなるな」