カツン、カツン。
どこか鋭い様な足音が響く。
気付けば周りはただの暗闇でしかなく、私がここに存在するかさえも疑わしく思えた。
…カツン、カツン。
ただひとつ、わかること…足音は確実に近づいている。
「だ、誰!?」
不意に裏返った声で私は叫んでいた。
『迎えに参りました。今宵、貴方はALICEとしてー…』

ジリリリリリリ!
「きゃあっ!」
いつもと変わらない、私の部屋がそこにはあった。
「ゆ、夢…」
汗ばんだままの手、額、頭に残ったままの足音とあの…声。夢と言うにはあまりにもリアルだった。
「何だったのかな…嫌な感じ…」

私は知らなかった。
これが全ての始まりということを。


「ね、ちょっと!」
「わわ!びっくりした…」
慣れた学校に、慣れた交友関係…のはずなのに、あの夢のせいか、学校に来てからも落ち着けずにいた。
「今日転入生が来るらしいよ!しかも男子っ!」
明るい髪をなびかせるテンションで、親友・柊真由子が騒ぐ。
「珍しいね、もう文化祭とかも終わってるのに」
「格好良いかな!?」
いや、私に聞かれても…ねぇ。

真由子のテンションをなんとか抑えて、私は中庭に出てきていた。
なんだか、校舎の中は息苦しい。
「…はぁー…」
深いため息を吐いて、芝生に横になった。

…頭に浮かぶのは、やっぱりあの夢のこと。