「ん……、あぁ?? なんで?」


あくびをしながら呑気に応える杉本。


「なんとなく」


気になったから。


「ふーん」

「ちがうの?」

「あのさ? 俺まだ傷心中。いわなかったっけ」


少しだけダルそうな感じで、あたしの目をのぞきこんできた。
さらに面倒くさそうに続ける。


「あれさー、家庭教師してる子。子っつっても中3だけど。夏祭り連れてってくれたら勉強頑張るって言われて無理矢理」

「そっか」


なるほど。
そうか、そうか。

だけど由香先輩のことを———… あの日のふたりの姿。

由香先輩が去ったあと、なんとも言えない杉本の表情をぼんやり思い出す。

別れた原因てなんだろう。

聞いたら応えてくれるかな。どうなんだろう。


「おまえいま、すっごい小難しい顔してるぞ」


顔を覗き込んで来た杉本がそういって、あたしの頬を人差し指でブニブニ押しながら笑った。