「おつかれ」

「こわかったっ!」


上り切るとそこには、ぎりぎり二人が座れるスペースがある。

杉本は“ポンポン”と、自分の横のあいてるスペースを叩いた。


「ようこそ」


まるで自分の部屋のように、あたしを招き入れる。

その仕種が妙に可愛く思え、また笑ってしまった。


「なに」

「いえ? お邪魔しまーす」


小高い丘の公園。背の高い遊具から見渡せる景色は大パノラマに広がっていた。

狭いスペースに座り込んでいるあたしたちは、必然的に肩を寄せ合う形になっている。


「間に合ったな」


目のまえでは、太陽があたしたちを待ち構えていたかのように真っ赤に燃えていた。


空も、

雲も、

街も、

杉本もあたしも。

全てを朱色に染めている。

日没してからでもしばらく空は朱くて、周りの景色は一段と陰影を濃くしていく。ただぼんやりと、自然が創りあげた美しい景色を眺めた。

あたし達は肩を並べたまま辺りが暗くなるまで。なにひとつ言葉を交わさなかった。

すっかり辺りが暗くなっている。