「ついた」

「ここ?」

「まだ間に合う」


杉本が足を止め着いた場所は、小高い丘の上にある公園。街の様子が一望できた。

そんなに広い公園ではないけれど、遊んでいる子供はもういない。ただただ蝉の声だけがうるさい。


「体育得意?」


杉本はあたしに向かって、軽く手招き。

向かった先にはジャングルジムに似た感じで、背の高い遊具がある。


「登れる?」


手をかけて軽々と上り始めた杉本。登りきったところであたしを見下ろしそう言った。この遊具と、まるで不釣合い。

そんな杉本が、また妙に笑える。


「なにわらってんの」

「あ、ごめ。大丈夫だと思う」


スカートをはいていたけれど気にせずに上り始めた。のはいいけれど。

重力に逆らい上を目指す感覚に軽く鳥肌が立つ。というか、


「なにこれ、こわっ」


小さいころは高いところが好きだったので、こんなのスタスタ身軽に上っていたはず。こんなに上りにくかったっけ??

余裕かと思っていたのに、久しぶりの感覚で身体がうまく動かない。


「がんばれ、あと少し」


頭上から聞こえていた声が、やっと近づいてきた。

見上げてみれば、またいつかと同じように手を差し出してくれる。

その手を、今度は何の躊躇もなく掴んだ。