だけどそれからの2時間が、いつもよりとても長く感じられる。

誰がどう見ても、あたしの様子がソワソワして見えるらしい。


「あと、15分ね」


あたしが時計を見る前に、こっそり時間を教えてくれた。

だけど本当にくるのかな?


「マコちゃんお疲れ。今日はもうあがっていいよ」


ようやく上がり時間になり更衣室へ気持ち早足で向かう。

早速携帯をチェックしてみたけれど杉本からの連絡はなにもない。ほんとに来るのだろうか? 

考えてみてもわかるわけがないので無駄な努力をやめた。

いつもよりは丁寧に髪をとかしつけながら、軽く化粧直しをして店を出る。


あ。


“来る”と言い残しただけの言葉だけで、それからなんの連絡も入ってなかったけれど、外にでてみれば歩道の柵に軽くもたれている杉本の姿があった。


「おせえ」


そんな不機嫌そうでもない顔。


「電話くれたら、よかったのに」


杉本はあたしをチラリと見た後、何も言わずにスタスタと歩き出す。


「ちょっと待ってよ」


時刻は夕方の6時半を回ったところ。
どこへ行くのかと杉本に尋ねてみたけれど“会いたくならなかった?”と逆に聞かれた。


「それよりさー
2時間以上、何してたわけ?」

「待ってた」


さも2時間以上、あそこでずっと待っていたかのような口ぶりが“杉本らしく”て、少し笑える。