「バイト?」
「あ、うん。杉本は、よく来るの?」
「たまに」
探しているタイトルがあるようで、パッケージを目で追いながら杉本は答える。
「えっと、何か…、お探しでしょうか〜?」
少し上ずったトーンであたしがそう言うと“なんかいいことあった?”と、逆に杉本が聞いてきた。
「ん? いいこと? なんで?」
「ないのか?」
どちらかといえば、いい事なんてなかったような気がするのだけれど。どうだろ?
ま、気持ちが吹っ切れてるのはたしかだ。
「ね、杉本は? いいことあった?」
「あ、おまえ、今日何時までバイト?」
やっぱり杉本も、あたしの問いかけには答えない。
それが妙に面白くて、思わず笑ってしまう。
「うんと、あと2時間ちょっとかな」
「おっけー。じゃ、また終わるころに来るから」
「え!?」
「じゃあ」
「えええ!!!?」
あたしの返事も聞かないまま、杉本は何も借りずに店から出て行ってしまった。
どーいうこと??