「あと、それでさー。あ、昨日のドラマ見た?」
「滝野の?」
「そうそうそう!あれはないよー。ほんとなんであのキャストに滝野くんなんだろう。あれは絶対ミスキャストだと思うんだよね。だいたいさー滝野くんて可愛いイメージなのにカッコいい役やったらダメじゃん浮いてるよー」
浮いてるのは間違いなくあたしだ。
沈黙を恐れるかのように、ひたすら喋った。
オチもなにもない、どうでもいい話でも笑ってくれるので喋る喋る喋る。
そして、ようやくマンションまで辿りつく。
送ってくれたお礼を言ってから、中嶋くんをみると、既にお酒の赤みが消えてたはずの顔が赤い。
すこし物珍しく感じて見ていると、少し俯いてから口を開きだした。
「俺———、昼に言ったこと本気だから。マコちゃんも真剣に考えてみて」
突然の告白。
だけどやっぱりどこかで、こうなることをなんとなく予感していたのかもしれない。
「返事はいつでもいいし」
どうしよう。だって出会って間もない中嶋くんのことを、よくしらない。
だけどあたしと出会って間もないのは、中嶋くんだって同じか…。
黙り込んでしまう。
「じゃあ、またバイトで」
中嶋くんはそういって来た道を戻りだした。
あたしのどんなところ?
どこがいいのだろう。
好きになるって、どういう気持ちの事だっけ。
いい人だとは思うんだけれど。
好きか嫌いかを問われると、嫌いじゃない。だから好きな部類には入ると思う。
なんか、あたしのそう言う感覚が鈍ってしまっている気がする。
そして考えるのも、だんだん面倒臭くなってきた。
ごめんね、中嶋くん。
このまま眠気に負けそう。
でも明日からのバイトのことを考えると、やっぱりなんか少し憂鬱。