「ねえ、てかさー? 屋上って立入禁止じゃなかったっけ?」

「あれって駅だよね? あたしんち見えるかな」

「ほんと風すごいねーー?」

「みんな授業中なのにパラダイスじゃん!」


あたし1人で喋っているようだけど、実際本当に1人で喋っていた。

だけどべつに返事なんて期待していない。それに杉本はあたしを見るでもない。

おそらくいつもの定位置と思われる場所に足を投げ出して座わっていた。

だけど、


「おい、辻」

「——なに?」

「あんまそっち行くなよ」

「なんで?」

「そこだと職員室から丸見えだし」

「あ、やばい」


関心がないわけでも、聞いてないわけでもないことはよくわかる。

こんな杉本との距離が心地いいことに、なんとなく気付きはじめている。