校舎の日陰はひんやりと気持ちがいいし、響く足音はとても心地いい。

穏やかな時間が流れているような、そんな錯覚にも似た感覚をこっそりひとり楽しんでいた。


「———っっ!!?」


急に立ち止まった杉本に、あたしが気付かずくわけもない。そのまま勢いよくぶつかってしまう。なんと杉本の背中へ顔面を強打してしまった。


「わっ!ご、ごめん!!!!」

「てかさ、何? 俺になんか用でもあるわけ?」

「ないよ」

「じゃあ、なんで後ろつけてんの」


顔面を強打してしまった衝撃からまだ立ち直れていなかったあたしは、その声で改めて周囲を見渡した。


「あれ???……ここ、どこ!???」


こんなベタなことってある? あたしは何も考えずに、ただひたすら杉本の後をついて歩いてたようだ。


「うわ!もしかしてさ、ここ屋上!?」


テンションが一気に上がったあたしは、返事もせずにガチャガチャ扉をあけてる杉本の背中を押しのけ先に屋上へと飛び出た。


「うわ〜〜!あたし屋上初めてなんだけど!!!」


ガラにもなく思わずぴょんぴょん跳びはねてしまう。


「なんか、すごい〜〜」


杉本はそんなあたしに目も暮れず、少し日陰になっているところを選んで座り雑誌の続きを読みはじめていた。


「ね、杉本!ここよく来るの?」


周りに何もない吹きっさらしの風通りのいい屋上は、あまりにも気持ちよくて思わず声も弾んでしまう。

いつもは遠くに見える山も近くに見える気がした。それに空が広くて飛行機が虫みたい。