そうすると思い付いたように私に
「そうだ。ついでに総支配人室まで案内してくれ。
このままだと俺がまた藤本に叱られてしまう」
そう言ってきた。

確かに、このまま帰したら
ちゃんと部屋まで戻れるか不安だわ。

「分かりました。ご案内します」

「すまないな。助かる」
総支配人が私にお礼を言ってくれた。

頼られるのは、悪い気がしない。

総支配人室に戻ると
藤本さんが真っ青な顔で怒っていた。
小言を言われている間……総支配人は、私に
こっそりとフルーツののど飴をくれた。

お礼のつもりだろうか?嬉しい。
大事に舐めようとポケットにしまう。

フロントの方に戻るとすでに
お昼になっていた。
「お疲れ様。わざわざ悪かったね。
総支配人を捜してもらうのを頼んで
お陰で助かったよ」
小山さんが申し訳なそうにお礼を言われる。

「いえ、これも大事な仕事ですから」

「フフっ……お昼になったから。
先に食べておいで。
丁度人の出入りも少ないから」

「はい。じゃあ、お先に失礼します」
頭を下げると私は、お昼休みを先に取らせてもらう。
嬉しい……小山さんにお礼を言われちゃった。