「あ、自分でやります……」
総支配人にそこまでやってもらうのは、
さすがに申し訳ない。
「そうか。なら好きなコップを勝手に使え。
俺は、その間に着替えと風呂の用意をするから」
そう言ってきた。
えぇっ……!?
着替えとお風呂と聞いてドキッとしてしまう。
そんなことを言われるとリアルに泊まりに来たのだと
実感して余計緊張してしまう。
総支配人がリビングから出て行くと私は、
緊張を紛らわすためにキッチンに向かう。
きちんと整理されているキッチンだ。
コップを取り出すと水道水を注ぎ入れて
ゴクゴクと飲み干した。
ど、どうしょう。
頭の中がパニックになってしまう。
すっかり酔いも覚めてしまった。
とりあえず落ち着くのよ!
総支配人は、何もしないと言っていたし
何かあるとも思えない……。
むしろ、あっても困る。
私は、小山さんが好きなのに……。
いや、しかし一晩一緒に居て何もしないと言うことは
女として魅力がないってこと?
だとしたら
それは、それでかなり複雑だった。
うーん。考えれば考えるほど
頭の中がパニックになる。
自分でも何を言ってるのか分からなくなる。
どうしょう……。
しばらくすると総支配人が戻ってくる。
「お風呂を入れたから先に入れ。
着替えは、これしかないけど……悪いな」
そう言い私に着替えを渡してくれた。