すると総支配人は、私の身体を離すと
「そんな状態で居るのは、危ない。
お前は、そのまま帰れ。送ってってやるから」
そう言って腕を引っ張ろうとしてきた。

えぇっ!?
総支配人が送ってくれるって言うの!!?

「いえ、大丈夫です。1人で帰れますし
主役の総支配人が抜け出したら周りが困りますから」
きっと皆、待っているだろう。

しかし総支配人は、
「主役は、お前と新人社員だろ。
俺は、次いでだ。顔を出したんだし誰も文句は、
言わないだろう。ほら、行くぞ」
素っ気なくそう言ってくる。

いや、違う意味で残念がる人も多いと思う。
特に女性社員が……。
それに2人で抜け出すなんて変な噂が立ってしまう。
誤解をされるようなことはしたくない。

「あの、大丈夫ですから……」
慌てて断ろうとするのだが、何故だか
腕を掴まれ離してくれない。

えぇっ!?
強引に連れて行かれる。
会社の人にひと声かけるとそのままお店を出ることに。

どうしょう……。
明日には、噂になっちゃう。
モヤモヤした気持ちのまま2人で夜道を歩いて行くのだが
しかし、ある疑問に気づく。

えっ?タクシーに乗らないの?
総支配人は、タクシーを捕まえようともせずに
ひたすら前を歩き続ける。
私は、てっきりタクシーで送ってくれるものだと
思っていたので驚いてしまう。

駅も逆方向だし、う~ん。
藤本さんか誰かに車を待たせてあるのかしら?
モヤモヤしていたが思い切って途中で立ち止まる。

「高城。どうした?
気持ち悪くて歩けないか?」
立ち止まっている私に気づいた総支配人は、
私に声をかけてくれた。