そんな私の演奏は気持ちが入ってなかったんだろう、気付いた海斗が間奏中に傍に寄って来た。


「歌夜!やる気がないならステージ降りろ!聴いてくれてる奴らに失礼だ」


あ!!


その目が鋭い。いつもと違う、本気で怒ってる声。


「ごめんなさい!」


海斗に言われてハッとした。


そうだ。この中に一人でも二人でも私たちの音楽を聴いてくれてる人がいる。その人のためにも気持ちを込めて弾かなきゃ!


私の馬鹿!!


自分に叱咤を飛ばし、私は唇を噛んだ。


ベースに集中する。ちゃんと紅志のギターを聴く。
それから、海斗の声を、感じる。


その瞬間、さっきまで定まってなかったバンドの音が、ギュッと引き締まった感覚があった。


これだ!


私がいけなかったんだ。ごめんね、みんな!


私は心の中で海斗たちに謝り、自分たちの音に耳をむけた……。