さあ、私たちの出番。
暗いステージにパッと明るい照明が当てられた。
その光の中へまず紅志が、そして私が。最後に海斗が踏み出した。
まばらな拍手。
オーディエンスが少ないし、恐らく私たちのこと知ってる人いないんだろうな。そんなこと思ってたら。
「海斗ー!紅志ー!」
前に固まってる女の子たちの中の誰かが叫んだ。
そしたら海斗がマイク掴んでそっち向いた。
「サンキュー!」
キャーキャー声があがった。
ていうか私の名前は?!
なんて思ってその女の子集団を見れば。
ぅおいっ!!お前かよ?!
最前列で海斗にキャーキャー声援を送ってたのは、さっき会ったばかりの住谷あさこ。
あいつぅ~、私の名前はなしかよっ!
内心がっかりしながらも、来てくれたことはすごく嬉しいな、と思った。
明るかった照明が少しトーンダウンする。
あ、始まる。
そしてスタンドマイクを握り、カウントを始めた海斗の声に意識を集中させた。
3、2、……