な~んて、のんびりしている間に一組目のバンドがそろそろ演奏終了する頃だ。
「ね、今やってる人たち、上手いの?」
正直私には何処が良いのか全くわからなかった。やたらギターの音だけが目立ってて、ボーカルの声も覇気がなかったし、ベースなんて私のほうがまだましなんじゃねぇの?!って感じ。
「全然ダメだな。くそだ、あんな音」
意外にも海斗じゃなくて紅志が答えた。そして、もうひとこと。
「でもな、あのドラムはいいかもしれない……」
「えっ?!」
「は?!」
私と海斗、同時に声を上げていた。
「紅志、それってどういう……」
海斗が口を開いた瞬間、スタッフから声がかかった。
「続きは後で、ほら、行くぞ」
どういうこと?!
ドラムの音?
私は紅志の言ったことを考えながら、ドキドキしてステージへと向かった。
ステージ上では一組目のバンドがラストの曲を演奏し終えるところだった。
ドラムの音なんて、全然気にしてなかった。しまった~。
ギターの旋律だけが耳について、ドラムを聴けていなかった自分が悔しい。紅志がいいかも、と言った音を聞き逃した。
私は持ち時間を終えて下手にはけるバンドメンバーたちを眺めながら、少し反省。もっとちゃんと他の人たちの音楽も聴かなきゃ、と改めて思った。