ライブハウス「ORANGE DOTS」
つい最近PRISONERが初ライブをした場所。
こんなに早く、またこのステージに立てると思ってなかった。
今日は5バンドも出る対バンイベント。私達の出番は2番目らしい。
「あんまりお客さん、入ってないね」
ステージの袖からオーディエンスの様子を見てきた私は、海斗に声を掛けた。
海斗達は、この間と同じ黒の衣装で出番を待っている。もちろん私もまた黒い服。
「まあね、今日出るバンドはさ、俺たちと同じでまだ特定のファンもそんなについてないような奴らばっかりだから」
そう言って細い指で煙草を挟んでライターに手を伸ばした。
「そっか。そうだよね、ま、今日はあの嫌な奴らもいないし!」
嫌な奴ってのはもちろん、BLACK NOISEの敦士のこと。
「ほら」
なかなか火の点かない海斗のライターを見て、紅志が自分のライターの火を海斗に差し出した。
「サンキュ。そうそう、あいつらのファンは多いからなぁ。悔しいけど」
フッと煙を吐き出しながら、海斗は苦笑い。その横で紅志も同じような笑みを浮かべてた。
私たちの今日の曲数はこの前よりも少ない4曲。バンドの数が多いと自然とそうなるよ。なんていう紅志の横で海斗は肩をすくめる。
「もっと歌いてぇなぁ」
「我慢しろ、そのうち歌えるようになるさ、声が枯れるまでな」
「マジで?!枯らしてみてぇな~、いや、枯れたら困るか?」
「ばぁか、例えばの話だよ。まじで声出なくなったら意味ねぇだろ」
私は二人の会話をにやにやしながら聞いてた。
「なに歌夜?キモいよ」
海斗が気付いて私を見た。
「ん?いや~二人とも仲良しだなぁと思ってね」
しばし二人の顔が固まった。
「キモっ!」
「仲良しはやめてくれ」
二人揃ってしかめっ面。やっぱり仲良しじゃん?