で、今ここでベースを持って路上に立たされてる私がいる。
『二週間でこの曲だけでも弾けるようになったら、仲間にしてあげる』
ニッコリと天使のような爽やか笑顔で私に課題を出した海斗が悪魔に見えた。
ベースは岡崎紅志がとりあえず貸してやる、と言ってくれて。
そんなの拒否すれば良かったのに、なぜか私は頷いてしまっていた。
も~二週間頑張ったさ!指の皮も剥けたよ!いてぇよ!
ヤケクソで猛練習して、今日この場所に現れた私を見て海斗は目を丸くしてひとこと。
「わぁ!ホントに来た!」
なんてふざけた第一声!?
私は思わず言ってしまった。
「えぇ来ましたよ!絶対に絶対にメンバーにしてもらうんだから!」
その台詞に海斗も紅志もなぜか顔を見合わせてニィッと笑った。
……こわっ!
「よ~し、よく言った!じゃあ今すぐ曲合わせてみよ」
「ままま、待って!待って!」
私は慌てて、ギターを肩に掛けた紅志の腕とアンプのスイッチを入れようとする海斗の手を掴んで止めた。
「なに?まだなんか言いたい?」
海斗が怪訝な顔で私を見る。
「いや、そうじゃなくて……合わせるって、ここで、ですか?」
引きつった顔で地面を指さした私。
「そうだよ」
当然、という表情で頷いた海斗。
「あ……そう、ですか」